採用内定取消
企業による人材募集は労働契約申し込みの誘因であり、これに対する応募又は採用試験の受験は労働者による契約の申し込みであり、採用内定通知が使用者による契約の承諾であり、これによって解約権留保付労働契約が成立するとされています。
採用内定通知書又は誓約書記載の採用内定取消事由が発生した場合には、解約(内定取消)することができるという性質をもちますが、一方で適法な内定取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として認められるものに限られるとされていますので、取消は容易ではありません。
卒業できなかったというときには、採用取り消しは問題ありませんが、例えば、提出書類への虚偽記載があったとしても、その内容・程度が重大なものかどうかで判断されますし、また経営悪化による内定取り消しの場合は、整理解雇に準じて検討されることとなります。
最近では、銀座のクラブでアルバイトをしていたとして、某テレビ局が女子アナの採用内定を取り消した事件がありました。(結局採用を前提とした和解となったようです。)この他にも、サラ金に多額の借金があるというようなこともあるかもしれません。こうした人は採用したくないということであれば、内定前に十分調査をする必要があるでしょう。
採用内定・内々定の取消
- 採用内定の取消
- 恣意的な内定取消については、債務不履行(誠実義務違反)又は不法行為(期待権侵害)に基づく損害賠償責任が生じる。
- 採用内々定の取消
- 採用内々定については、一般的には労働契約の成立とは認められていないが、内々定の取消においても、場合によって損害賠償責任が生じることがある 。
<裁判例>
コーセーアールイー採用内定取消事件 平成22(ネ)663等 H23.02.16/福岡高裁 平成21(ワ)1737 H22.06.02/福岡地裁 |
採用の内々定取消に対し、債務不履行又は不法行為に基づいて、損害賠償を請求した事件 (1審と同じ) ・慰謝料(20万円)+弁護士費用(2万円)の損害賠償 具体的労働条件の提示,確認や入社に向けた手続等は行われておらず、始期付解約権留保付労働契約が成立したとはいえない 労働契約が確実に締結されるであろうとの原告の期待を侵害する信義則違反(不法行為)として ・慰謝料(75万円)+弁護士費用(10万円)の損害賠償 |