人事(配置転換)

ここでは、人事制度に関係する裁判例を記載します。

人事関係で比較的トラブルが多いのは、配置転換・転勤に関するものです。就業規則に、「業務の都合により、配置転換、転勤を命じることがある」と規定されている場合、個別の労働契約で、職種・職務や勤務地が限定されていなければ、人事権の一つとして、使用者に配転命令権があるとされていますが、場合によっては、権利の濫用として配転命令が無効となることがあります。



人事


  <裁判例>

地位確認等請求事件(リコー出向)

平成24(ワ)14574
H25.11.12/東京地裁
事務機器、光学機器メーカーの技術者2名が、希望退職に応じなかったことによる物流現場へ出向命令が、権利の濫用として無効とし、地位確認と不法行為に基づく損害賠償請求を求めた事件
人選の合理性、職業上又は生活上の不利益、動機・目的からみて、出向命令は権利の濫用として無効とされたが、不法行為とは認めず、従って損害賠償請求は棄却
田中興業エンタープライズ配転

平成19(ワ)10940
H20.09.22/東京地裁
貨物自動車運送業の田中興業エンタープライズの車庫所長が、産業別労働組合の分会を結成し、労基署に未払い残業の申告をしたところ、配転命令を受けたので、権利濫用で無効とし、損害賠償を請求した事件
飲酒運転等の車庫所長としての適格性がないことよりも、組合の結成等を重視して、配転命令を発したと推認することができ、不当労働行為であると認められるから命令は無効であり、少なくても過失による不法行為が認められ損害賠償義務を負う(慰謝料20万円)
同様に組合に対しても、不法行為責任を負う(損害賠償20万円)
ノース・ウエスト・エアラインズ・インコーポレイテッド配転
平成18(ネ)2785
H20.03.27/東京高裁




平成15(ワ)1354
H18.04.27/東京地裁
フライト・アテンダント(FA)が、地上職である成田旅客サービス部に配転を命じられたため、配転命令の無効を主張し、併せて不法行為による精神的苦痛に対する慰謝料及び遅延損害金の支払を求めた事件
配転命令は権利の濫用であり無効
経営状態が思わしくなく、コスト削減の必要性は認められるが、余剰人員の算出方法が恣意的であり、また、FAの職位確保の努力義務を定めた労使確認書(労働協約)の信義則に反する不法行為及び誇りを持って精勤してきたFAの仕事から外されたことに対し、慰謝料(1人当たり80-100万円)の支払いを認める
配転命令は有効
応募条件に専門的な知識・技能を求められておらず、就業規則に配転命令の規定があり、過去に配転の例もあることから、職種限定が合意されていたとは認められない
人件費の削減等、配転命令を実施する業務上の必要性があった
配転により受ける不利益が通常甘受すべき程度を著しく超えるものということはできないし、配転命令が他の不法な動機・目的をもってなされたものであるとも認められない

  <裁判例>

コナミデジタルエンタテインメント降格
平成23(ネ)2946
H23.12.27/東京高裁



平成21(ワ)20155
H23.03.17/東京地裁
育児休業後の復職時、グレードの低い職務に変更して降格、それに伴い降給
降格・降給は無効として差額の支払いを認める
大幅な報酬の減額(550万円から500万円/年)を伴う役割グレードの変更を、就業規則や年俸規程に明示的な根拠もなく、労働者の同意もな く、使用者の一存で行うことができるとすることは、労使双方の対等性を損なうもので、人事権の濫用である(慰謝料30万円)
降格・降給は有効
復職時の社員の配置及び担当状況等により、元の職務に復職できず、グレードの少し低い職務に配置せざるを得ず、それに伴って降給したもので、 育児休業やその後の時短勤務による不利益措置等人事権の濫用ではない
一部不法行為に対し慰謝料30万円

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