いじめ・嫌がらせ(ハラスメント)
ここでは、次の労働裁判例について記載します。
- セクシャルハラスメント
- マタニティハラスメント(妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い)
- パワーハラスメント
いじめ・嫌がらせ(ハラスメント)
- セクシャルハラスメント
- セクシュアルハラスメントの状況は多様であり、個別の状況を斟酌する必要がありますが、厚生労働省のHPでは、一般に「平均的な女性(又は男性)労働者の感じ方」を判断基準とするとしています。
- 直接の加害者だけでなく、男女雇用機会均等法におけるセクハラ防止のための雇用管理上必要な措置を十分に講じていないときは、民法715条の使用者責任を問われる可能性があります。
<裁判例>
質屋銀蔵セクハラ事件 平成24(ネ)1342 H24.08.29/東京高裁 平成22(ワ)8627 H24.01.31/東京地裁 |
在学中に質屋「銀蔵」から内定を得て、アルバイトとして働きはじめた社員が、社長と店長から性的関係を強要されたことに加え、オーナー会長の言動により、肉体的精神的苦痛を受けたとして、不法行為による慰謝料等損害賠償の支払を求めた事件 要求を拒絶することは不可能であったとまではいえないが、心理的に要求を拒絶することが困難な状況にあったものと認められ、性行為を受け入れたからといって、自由な意思に基づく同意があったと認めることはできない、として慰謝料300万円の支払いを認めた(使用者責任も一部認めた) 合意の上の性行為とし、また、地位利用についても認めず、請求を棄却 |
- マタニティハラスメント(妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い)
- 妊娠中に軽易業務に転換し、それを機に降格処分を行ったケースに対し、最高裁は次のいずれかの場合を除き、男女雇用機会均等法(均等法)違反と判示しました。(軽易業務に転換すれば、処遇も低くなって当然のようにも思えますが、最高裁は原則違法としました。)
- 業務上の必要性から、降格することなく軽易業務に転換させることに支障がある場合であって、その必要性の内容・程度、降格による有利・不利な影響の内容・程度に照らして均等法の趣旨・目的に実質的に反しないと認められる特段の事情が存在するとき
- 労働者が自由な意思に基づいて降格を承諾したと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき
<裁判例>
広島中央保健生活協同組合事件 地位確認等請求事件 平成24(受)2231 H26.10.23/最高裁第一小法廷 |
妊娠中に軽易業務に転換したことで副主任を免じられた理学療法士が、復帰後も妊娠前の職位に戻さないのは不利益取扱いであるとして管理職手当と損害賠償を請求した事件 「本人の承諾」や「特段の事情の有無」を検討するよう、原審に差戻した 妊娠に際し、軽易作業への転換を「契機として」の降格は、「本人の承諾」や「特段の事情の有無」がない限り不利益取扱いに当たる 1審、2審共に人事配置上の必要性に基づいてその裁量権の範囲内で行われたものとして請求を却下していた |
- パワーハラスメント
<裁判例>
大和証券・日の出証券事件 地位確認等請求事件 平成25(ワ)3690 H27.04.24/大阪地方裁判所 |
子会社の証券会社に出向し、その後なされた転籍が無効であるとし、地位確認と転籍後の賃金の支払い、更に、上司の嫌がらせに対し、両社の共同不法行為による慰謝料を求めた事件 転籍については、合意が成立しているとして有効 不法行為については、他の社員から隔離し、実績のほとんど上がらない新規顧客開拓業務のみ行わせ、しかも、組織的かつ長期にわたる悪質なものであるとして150万円の慰謝料を認めた |