障害者の就労支援
障害者を支援する法律はいくつかありますが、その中で就労支援に関する主なものは次の2つでしょう。
- 障害者総合支援法
- 障害者雇用促進法
就労支援としては、ハローワークの他にも就労相談や職業訓練等種々ありますが、ここでは、これら法律において、主として民間事業者に経済的な支援を行うことで障害者の就労を支援する制度のいくつかを記載します。
(就労系)障害福祉サービス事業
障害者総合支援法には、障害者の就労に向けての様々な支援・助成制度が規定されています。
福祉サービスにおける訓練等給付費として、次の4つの就労支援事業があります。
- 就労移行支援事業
- 就労継続支援事業(A型)
- 就労継続支援事業(B型)
- 就労定着支援事業
最初の3つの事業の概要については、厚生労働省のHPからコピーしたこちらを参照下さい。PDFファイル(就労支援事業)
4つ目の就労定着支援事業は平成30年4月から始まった新しいサービス事業です。
障害者の方が、これら就労支援事業を利用したいときは、市役所等にて「障がい福祉サービス受給者証」の交付を受けます。
一方、こうした事業を行いたい事業主は、都道府県より事業者として指定を受ける必要があります。
障害者(「利用者」という)がサービスを利用した場合、世帯の所得に応じて利用料の一部(最大で1割)を支払うことになっていますが、多くの場合利用者の負担はなく、行政から利用者に支給される利用料の助成が、直接サービス提供事業者に支払われる仕組みとなっています。
就労移行支援事業と就労継続支援事業(B型)の場合は、行政から助成されるサービス費用が福祉サービス事業者の主な収入となりますが、就労継続支援事業(A型)では、一般の企業と同様に何らかの収益事業を営んでおり、こちらの収入も加わる一方、利用者を雇用して最低賃金以上の賃金を支払う必要があります。
障害者雇用納付金制度
障害者の雇用に伴う事業主の経済的負担の調整を図るとともに、全体としての障害者の雇用水準を引き上げることを目的に、障害者の法定雇用率未達成企業から納付金を徴収し、雇用率達成企業に対して調整金、報奨金を支給するとともに、障害者の雇用の促進等を図るための各種の助成金を支給するものです。
障害者雇用促進法において、一般民間企業における障害者の雇用率は次のように設定されています。
(雇用する身体・知的・精神障害者である常用労働者の総数)≧(常用労働者の数)x2%
つまり、常用労働者が50人以上いる会社は障害者を少なくても1人雇用しなければなりません。そして常用労働者が50人増えるごとに障害者を1人ずつ増やす必要があります。
ここで、「常用労働者」とは、雇用契約の形式の如何を問わず、
- 雇用期間の定めがなく雇用されている週所定労働時間が20時間以上の労働者
- 一定の雇用(契約)期間を定めて雇用されている労働者であって、その雇用期間が反復更新され、@雇入れのときから1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる労働者又はA過去1年を超える期間について引き続き雇用されている労働者であって、週所定労働時間が20時間以上の労働者
とされており、また、常用労働者数のカウントにおいて、
- 一般労働者(週所定労働時間30時間以上)は1人を1人としてカウント
- 短時間労働者(週所定労働時間20時間以上、30時間未満)は、1人を0.5人としてカウントします
また、障害者の総数は次のようにカウントします。
週所定労働時間 | 30時間以上 | 20時間以上30時間未満 |
---|---|---|
身体障害者 (重度) |
1カウント/人 2カウント/人 |
0.5カウント/人 1カウント/人 |
知的障害者 (重度) |
1カウント/人 2カウント/人 |
0.5カウント/人 1カウント/人 |
精神障害者 | 1カウント/人 | 0.5カウント/人 |
雇用率の算定においては、特例子会社を有している場合には、特子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなして、実雇用率を算定できます。また、一定の要件を満たす場合には、企業グループ全体で雇用率を算定することも可能です。
- 障害者雇用納付金
- 雇用している障害者数が、法定雇用障害者数に達していない事業主は毎年納付金を納付します。
- 4月からの1年度において、100人を超える(100.5人以上の)月が5か月以上ある事業主が対象です(年度途中の事業廃止等の場合は、5か月以上でなくても、申告が必要となることがあります)
- 前年度の各月ごとの算定基礎日における法定雇用障害者数の年度間合計数(A)が、各月ごとの算定基礎日における雇用障害者数の年度間合計数(B)より大きい場合、次式による納付金を納めなければなりません
納付金額=(A−B)x5万円
- 4月からの1年度において、100人を超える(100.5人以上の)月が5か月以上ある事業主が対象です(年度途中の事業廃止等の場合は、5か月以上でなくても、申告が必要となることがあります)
- 注記
- 各月の法定雇用障害者数に1未満の端数があるときは、切り捨てます
- 除外率が適用される事業の場合は、常用労働者数に除外率を掛けた数を用いて法定雇用障害者数を計算します
(除外率制度:障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種について、雇用する労働者数を計算する際に、除外率に相当する労働者数を控除する(障害者の雇用義務を軽減する)制度ですが、平成16年4月に廃止され、現在経過措置として、段階的に除外率を引き下げ、縮小することとされています) - 法定雇用率未達成事業主で、在宅就業障害者特例調整金(後述)の支給がある場合は、その額に応じて、障害者雇用納付金が減額されます
- 常時雇用している労働者数が100人を超え200人以下の事業主は平成27年 4月1日から平成32年3月31日まで納付金の減額特例が適用されます
- 算定基礎日は各月ごとの初日とすることが原則ですが、賃金締切日(複数ある場合には、初日に最も近い賃金締切日)とすることもできます。なお、算定基礎日を賃金締切日とした場合は、あくまで賃金締切日において常時雇用している労働者数及び雇用障害者数を把握し、賃金受領者全員を算入することにはならないことに注意して下さい(つまり、賃金締切日までに離職している者は除くということです)
- 障害者雇用調整金
- 雇用している障害者数が、法定雇用障害者数を超えている事業主に支給されます。
- 上記障害者雇用納付金の説明において、(B)が(A)より大きい場合、次式による調整金が支給されます
調整金額=(B−A)x2.7万円
- 上記障害者雇用納付金の説明において、(B)が(A)より大きい場合、次式による調整金が支給されます
- 注記
- 上記障害者雇用納付金の場合と原則同じですが、除外率は適用しません
- 報奨金
- 常時雇用する労働者数が100人以下の場合で、雇用している障害者数が、一定数を超えている事業主に支給されます。
- 前年度の4月から、100人以下の月が8か月以上あり、各月ごとの算定基礎日における雇用障害者数の年度間合計数が、「各月毎の算定基礎日における常時雇用している労働者数に4%を乗じて得た数の年度間合計数」又は「72人」のいずれか多い数を超える事業主が対象です
- 報奨金の額=(B−A)×21,000円
A: 「各月毎の算定基礎日における常時雇用している労働者数の4%の年度間合計数」又は「72人」のいずれか多い数
B: 各月毎の算定基礎日における雇用障害者数の年度間合計数
- 注記
- 除外率は適用しません
- 在宅就業障害者特例調整金
- 在宅就業障害者等に仕事を発注した場合、その支払総額に応じた額が支給されます
- 前年度に在宅就業障害者又は在宅就業支援団体に対し仕事を発注し、業務の対価を支払った事業主が対象です
- 調整金の額は、「調整額」に「事業主が前年度に支払った在宅就業障害者への支払い総額を評価額で除して得た数」を乗じて得た額です(詳細については、厚生労働省のHPを参照下さい)
障害者関連助成金
障害者関連の助成金については、こちら(助成金ガイド)を参照下さい。