作業環境測定
厚生労働省によると、「作業環境管理」、「作業管理」及び「健康管理」を労働衛生の3管理と称します。
これら3管理は、労働者の健康確保に不可欠とされ、逆に云えば、3管理が不十分で、社員の健康が損なわれたときは、不法行為或いは安全(健康)配慮義務違反として損害賠償責任を追及されるリスクがあることになります。
作業環境管理の前提となるのは作業環境測定ですが、労働安全衛生法第65条は、作業環境測定について、次のように規定しています。
- 「労働安全衛生法施行令21条で定める有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場について、厚生労働大臣の定める作業環境測定基準に従って必要な作業環境測定を行い、作業環境評価基準に従って測定結果を評価し、評価結果に基づいて、労働者の健康を保持するため必要があると認められるときは、厚生労働省令で定めるところにより、施設又は設備の設置又は整備、健康診断の実施その他の適切な措置を講じなければならない。」
- 「これら作業環境測定や評価結果は、記録しなければならない。」
ここでは、作業環境測定についての法規制について概略を説明します。下記のいずれかに該当する作業場があるか若しくは該当するかもしれないと思われるときは、法令で詳細を確認するか、或いはオフィスおかべにお問合わせ下さい。
作業環境測定を行わなければならない作業場
安衛法施行令21条で定める、作業環境測定を行わなければならない作業場は、次の通りです。
また、作業環境測定法によると、この中で、●で示す作業場は、指定作業場と呼ばれ、有資格者である作業環境測定士又は登録された作業環境測定機関に依頼して作業環境を測定しなければなりません。 (対象となる作業場の要件の詳細については、各法令にて確認して下さい。)
- 土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんを著しく発散する(常時特定粉じん作業が行われる)屋内作業場(粉じん則26条)
- 粉じん作業、特定粉じん作業については粉じん障害防止規則を参照下さい
- 測定項目、頻度、記録
- 測定項目: 空気中の粉じん濃度、(特定のケースでは)粉じん中の遊離ケイ酸の含有率
- 測定頻度: 6ヶ月毎
- 記録の保存: 7年
- 暑熱、寒冷又は多湿である安衛則587条に示す屋内作業場(安衛則607条)
- 測定項目、頻度、記録
- 測定項目: 気温、湿度、(一部の作業場では)輻射熱
- 測定頻度: 半月毎
- 記録の保存: 3年
- 著しい騒音を発する安衛則588条に示す屋内作業場(安衛則590、591条)
- 測定項目、頻度、記録
- 測定項目: 等価騒音レベル
- 測定頻度: 6ヶ月毎、及び施設、設備、作業工程、作業方法の変更時
- 記録の保存: 3年
- 安衛則589条に示す坑内の作業場
- 炭酸ガスが停滞し、又は停滞する恐れのある坑内作業場(安衛則592条)
- 測定項目、頻度、記録
- 測定項目: 炭酸ガス濃度
- 測定頻度: 1ヶ月毎
- 記録の保存: 3年
- 気温が28℃を超え、又は超える恐れのある坑内作業場(安衛則612条)
- 測定項目、頻度、記録
- 測定項目: 気温
- 測定頻度: 半月毎
- 記録の保存: 3年
- 通気設備が設けられている坑内作業場(安衛則603条)
- 測定項目、頻度、記録
- 測定項目: 通気量
- 測定頻度: 半月毎
- 記録の保存: 3年
- 中央管理方式の空気調和設備を設けている建築物の室で、事務所の用に供されるもの(事務所則7条)
- 測定項目、頻度、記録
- 測定項目: 一酸化炭素と二酸化炭素の含有率、室温及び外気温、相対湿度
- 測定頻度: 2ヶ月毎
測定を行おうとする日の属する年の前年1年間において、室の気温が17度以上28度以下及び相対湿度が40%以上70%以下である状況が継続し、かつ、測定を行おうとする日の属する1年間において、引き続き当該状況が継続しないおそれがない場合には、室温、外気温及び相対湿度については、3月から5月までの期間または9月から11月までの期間、6月から8月までの期間及び12月から2月までの期間ごとに1回の測定とすることができます - 記録の保存: 3年
- 電離則53条に示す放射線業務を行う作業場
- 放射線業務を行う作業場のうち、管理区域に該当する部分(電離則54条)
- 測定項目、頻度、記録
- 測定項目: 外部放射線による線量当量率又は線量当量
- 測定頻度: 1ヶ月毎
- 記録の保存: 5年
- 坑内の核原料物質の採掘の業務を行う作業場(電離則55条)
- 測定項目、頻度、記録
- 測定項目: 空気中の放射性物質の濃度
- 測定頻度: 1ヶ月毎
- 記録の保存: 5年
- 電離則53条に示す放射線業務を行う作業場
- 放射性物質取扱作業室(電離則55条)
- 測定項目、頻度、記録
- 測定項目: 空気中の放射性物質の濃度
- 測定頻度: 1ヶ月毎
- 記録の保存: 5年
- 第1類又は第2類の特定化学物質を製造し、若しくは取り扱う屋内作業場及びコークス炉上において若しくはコークス炉に接してコークス製造の作業を行う作業場(特化則36条)
- 測定項目、頻度、記録
- 測定項目: 第1類物質又は第2類物質の空気中の濃度
- 測定頻度: 6ヶ月毎
- 記録の保存: 3年(特定の物質については30年)
- 石綿等を取り扱い、若しくは試験研究のため製造する屋内作業場(石綿則36条)
- 測定項目、頻度、記録
- 測定項目: 石綿の空気中の濃度
- 測定頻度: 6ヶ月毎
- 記録の保存: 40年
- 鉛業務を行う屋内作業場(鉛則52条)
- 測定項目、頻度、記録
- 測定項目: 鉛の空気中の濃度
- 測定頻度: 1年毎
- 記録の保存: 3年
- 酸素欠乏危険場所において作業を行う場合の当該作業場(酸欠則3条)
- 測定項目、頻度、記録
- 測定項目: 第1種酸素欠乏危険作業に係る作業場では、空気中の酸素の濃度、第2種酸素欠乏危険作業に係る作業場では、空気中の酸素および硫化水素の濃度
- 測定頻度: 作業開始前
- 記録の保存: 3年
- 測定は、酸素欠乏危険作業主任者(第2種酸素欠乏危険作業にあっては、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者)に行わせなければなりません
- 第1種有機溶剤又は第2種有機溶剤を製造し、又は取り扱う業務を行う屋内作業場(有機則28条)
- 測定項目、頻度、記録
- 測定項目: 有機溶剤の濃度
- 測定頻度: 6ヶ月毎
- 記録の保存: 3年
作業環境測定方法と測定結果の評価
作業環境測定は、厚生労働省告示46号の「作業環境測定基準」(改正H23.3.30厚生労働省告示第91号)に従って行わなければなりません。(基準の詳細は省略します)
また、放射性物質取扱作業室を除く指定作業場については、測定結果の評価は、厚生労働省告示79号の「作業環境評価基準」(改正H23.3.30厚生労働省告示第92号)に従って、第1〜第3管理区分に区分することで行われます。(基準の詳細は省略します)
そして、上述のように、評価結果に基づいて、労働者の健康を保持するため必要があると認められるときは、施設又は設備の設置又は整備、健康診断の実施その他の適切な措置を講じなければならないこととなります。
例えば、指定作業場において、第2、第3管理区分となったときは、第1管理区分となるよう対策を講じることになります。