ストレスチェック
労働者のメンタルヘルスケアは、一般に次の3つの取組段階に分けられます。
- 一次予防: 労働者自身のストレスへの気付き及び対処の支援並びに職場環境の改善を通じて、メンタルヘルス不調となることを未然に防止する
- 二次予防: メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な対応を行う
- 三次予防: メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援する
この中で、一次予防を主な目的として、労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)や、検査結果に基づく医師による面接指導の実施などを事業者に義務付ける制度(ストレスチェック制度)が、平成27年12月から施行されます。(従業員数50人未満の事業場は、当分の間努力義務)
以下、厚生労働省によるストレスチェック制度の流れ図に沿って説明します。
ストレスチェック制度
平成27年4月の厚生労働省の「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(メンタルヘルス指針)に基づき、事業者は次の事項を実施しなければなりません。
詳細については、「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」(実施マニュアル)(平成27年5月厚生労働省)を参照下さい。
- 基本方針の表明
- メンタルヘルスに関する会社の方針を定めます
- 安全衛生方針の一環として定めるのが通常かもしれません
- 定めた方針を事業場内で表明します
- 実施方法等について調査審議と社内規程の作成
- 衛生委員会(50人以上の事業場では、衛生委員会の設置が義務付けられています)で、次の事項を調査審議し、ストレスチェック制度の実施に関する規程を定めます
- ストレスチェック制度の目的に係る周知方法
- ストレスチェック制度の実施体制
(ストレスチェックの実施者及び実施事務従事者については後述) - ストレスチェック制度の実施方法
- ストレスチェック結果に基づく集団ごとの集計・分析の方法法
- ストレスチェックの受検の有無の情報の取扱い
- ストレスチェック結果の記録の保存方法
- ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析の結果の利用目的及び利用方法
- ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の開示、訂正、追加及び削除の方法
- ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の取扱いに関する苦情の処理方法
- 労働者がストレスチェックを受けないことを選択できること
- 労働者に対する不利益な取扱いの防止
- 実施マニュアルでは、この規程の例として「実施計画例」が示されています
- 就業規則の一部として労基署に届け出る必要まではないように思われます
- ストレスチェックの実施
- ストレスチェックの実施体制は、次のようになります
- ストレスチェック制度担当者:ストレスチェック実施計画の作成、実施の管理
- 実施者:ストレスチェックの実施、面接指導の実施
- 実施事務従事者:実施者の補助
- 実施者には医師や保健師等がなりますが、産業医が最も望ましく、外部機関に委託するときも産業医が関与することが望まれます
- 実施事務従事者は、調査票の回収やデータ入力等ストレスチェック結果を取り扱うため、人事権を有する者は従事できません
実施者及び実施事務従事者には、当然ながら守秘義務が課せられます - 対象労働者(常時使用する社員)
- 期間の定めのない労働契約により使用される者(契約の更新により1年以上使用されている者、又は1年以上使用されることが予定されている者を含みます)
- 1週間の労働時間数が同種の業務に従事する通常の社員の所定労働時間数の4分の3以上のパート社員
- 休職中の社員には行う必要はありません
- 派遣労働者は、法に基づく義務として派遣元が実施するストレスチェックと、後述の集団ごとの集計・分析のために派遣先が実施するストレスチェックの両方を受けることになります
- 実施方法は、毎年1回、調査票を用いて行います
- 一般定期健康診断と同時に実施することは可能ですが、ストレスチェックは強制できませんし、また、結果は本人にのみ通知され、本人の同意がなければ事業者に通知されない等、一般健診と異なる点があるので注意が必要です
- ストレスチェックの項目(調査票)としては、厚生労働省から「職業性ストレス簡易調査票」(57項目)や簡略版の23項目のものが発表されています
(一定の条件下で、衛生委員会で審議の上、独自の項目を設定できますが、「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3領域を含むことが求められています)
- 一般検診と異なり、事業者の指定した実施者以外で受けることは認められていません
- 事業者に義務付けられていますので、ストレスチェックや面接指導の実施費用は事業者の負担です(但し、これらに要した時間を有給にするか無給にするかは労使協議により決定できます)
- ストレスチェック結果の通知
- ストレスチェック結果は、実施者(又は実施事務従事者)が労働者に直接通知します
- 実施者は、面接指導を受けた方が良いと思われる労働者に対して、医師による面接指導を受けるように勧奨します
この場合、事業者の安全配慮義務の観点から、労働者の同意を得て、事業者に結果を伝えることが望ましい(同意は、本人に結果を通知後に得る必要があります)
また、労働者から面接指導の申出があったときは、事業者に結果を通知することに同意がなされたものとみなすことができます
- 面接指導
- 面接指導の要件に該当する労働者から面接指導の申出があった場合、事業者は、概ね1ヶ月以内に医師による面接指導を行わなければなりません
- 面接指導を申し出たことを理由に不利益取扱いをしてはなりません
- 面接指導の結果に基づき、必要に応じ次のような就業上の措置を講じます
- 就業場所の変更
- 作業の転換
- 労働時間の短縮
- 深夜業の回数の減少
- 結果の記録
- ストレスチェック及び面接指導の結果は記録し、5年間保存します
- ストレスチェック結果に基づく集団ごとの集計・分析と職場環境の改善
- 集団毎の集計と分析は努力義務です(内容の詳細は省略します)
- 派遣労働者がいる場合は含めます
- 対象者10人以上の集計・分析結果を事業者に提供するにあたって、集団内の個人の同意は不要です(10人未満の場合は、全員の同意が必要)
- 実施状況報告
- 毎年、検査結果等報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません