賃金分析
可能な限り高い賃金を支払いたい、そして優秀な人材を確保したい、というのが経営者の偽らざる気持ちだと思いますが、売上げや利益が限られているとすれば、限界があります。
一方で、今後も社会保険料の増加が予定されており、人件費は、たとえ賃金部分が増加しなくても着実に増加していきます。
ここでは、賃金水準と賃金の支払能力について説明します。
賃金水準分析
賃金制度を見直す、或いは、整備したいという場合には、まず、自社の賃金レベルを分析してみて下さい。(社員数が少ないときは、分析に限界があります)
- 支給分布図
- 全社員について、年齢に対し所定内賃金をグラフにプロットします
- 職務給だけというようなケースを除き、年功給の要素が賃金制度に含まれているときは、大まかには右肩上がりになっています
- 高年齢になると、管理職への昇進等、同一年齢で賃金格差が生じてきますので、バラつきが見られるのが通常ですが、高年齢層以外でバラつきが大きいときは、年功給要素が小さいか、或いは何らかの理由で賃金制度から外れていることが考えられます
- 年齢平均線
- 社員の年齢毎に所定内賃金の平均値を計算し、年齢に対してプロットします
- 賃金傾向曲線
- ある年齢の±2歳の所定内賃金の平均値を計算し、年齢に対してプロットする
- これは、上記の年齢平均線をなだらかにしたもので、より傾向がはっきりしてきます
- 統計調査との比較分析
- 下記賃金水準の参考資料のデータと自社の賃金カーブを比較します
- 所定内賃金、賞与、業種別、都道府県別、等々いろんな視点から比較分析します
支払能力分析
次に支払能力を分析します。人件費関連の重要な指標として、次の値を求めます。
@対売上高人件費比率=人件費/売上高
A労働生産性=付加価値/従業員数
ここで、付加価値=人件費+支払利息等+動産・不動産賃借料+租税公課+営業純益
=経常利益+人件費+他人資本利子+地代家賃+租税公課+減価償却費
B労働分配率=人件費/付加価値
C1人当たり人件費=人件費/従業員数(=労働分配率x労働生産性)
- 1人当たりの人件費を上げるには、労働分配率 又は/及び 労働生産性を上げる必要があります
労働分配率は、株主等と社員では利害が反する面がありますので、適正水準で落ち着くことになりますが、労働生産性は、高ければ高いほど良いものです - そこで、労働生産性を上げなければなりません
労働生産性=付加価値率x1人当たり売上高 と書き換えられます
即ち、付加価値率(=付加価値/売上高) 又は/及び 1人当たり売上高(=売上高/従業員数)を上げる必要があることになります - 「労務パフォーマンス指標」ページに示した労働分配率や1人当たり売上高等の統計データと比較することで、昇給を実施するか、抑制するかといった判断の参考となります
賃金水準の参考資料
賃金に関する統計値は、以下の資料等で発表されていますので参考にして下さい。
- 賃金構造基本統計調査(厚生労働省)
- 賃金センサスと呼ばれているもので、毎年、産業別、規模別、年齢別、男女別等に所定内賃金や賞与額及び初任給等が発表されています
- 毎月勤労統計調査(厚生労働省)
- 毎月、産業別に所定内賃金及び所定外賃金が発表されています
- その他に、労働時間、日数、離職率等も含まれています
- 新賃金傾向値表(厚生労働省総計情報部)
- 「賃金構造基本統計調査」をもとに作成されたものです
- 中小企業の賃金・退職金事情(東京都産業労働局労働相談情報センター)
- 東京都による、従業員数10〜300人の都内中小企業を対象とした賃金の調査結果です
- 賃金、賞与、諸手当、初任給等は毎年、退職金と労働時間については、隔年で交互に調査しています
- 標準生計費(人事院)
- 総務省の「家計調査」等に基づき、標準生計費を費目別、世帯人員別に算定したものです