女性社員のための法規制
労働法は基本的には男女平等なのですが、主として母性保護の観点から、女性に適用される法規制がいくつかあります。
ここでは、次の3ケースに分けて、女性社員を採用する場合に知っておかなければならない法規制や注意事項を取り上げます。
- 女性社員に共通して適用されること
- 妊産婦に適用されること
- 育児する者に適用されること(この場合、ほぼ男女共通ですが、実態として女性が育児することが多いので取り上げました)
女性社員(共通)
男女間の差別をなくし、且つ、女性の母性を保護するためにいくつかの規定が設けられています
- 労働基準法
- 賃金について、女性であることを理由として、男性と差別的取扱いをしてはなりません(4条)
- 有利・不利いずれに取り扱ってもなりません
- 全ての女性に対し、次の坑内業務や危険有害業務は就業を禁止しています(64条の2、3)
- 坑内業務
@人力により行われる土石、岩石若しくは鉱物(鉱物等)の掘削又は掘採の業務
A動力により行われる鉱物等の掘削又は掘採の業務(遠隔操作により行うものを除く)
B発破による鉱物等の掘削又は掘採の業務
Cずり、資材等の運搬若しくは覆工のコンクリートの打設等鉱物等の掘削又は掘採の業務に付随して行われる業務(鉱物等の掘削又は掘採に係る計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、保安管理その他の技術上の管理の業務並びに鉱物等の掘削又は掘採の業務に従事する者及び鉱物等の掘削又は掘採の業務に付随して行われる業務に従事する者の技術上の指導監督の業務を除く) - 危険有害業務(添付ファイルの通りです) ⇒ (PDFファイル 138KB)
- 詳細は、「女性労働基準規則」に規定してありますので参照下さい
- 坑内業務
- 生理のため就業が困難であると女性が休暇を請求した場合には、休暇(半日や時間単位でも可)を与えなければなりません(68条)
- 休暇の日数は、個人により苦痛の程度が異なるので制限してはなりません
- 有給休暇とするか、無給休暇とするかは就業規則等で定めます
- 男女雇用機会均等法
- 募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければなりません(5条)
- 「募集・採用の法規制」のページを参照下さい
- 次の事項について、性別を理由として、差別的取扱いをしてはなりません(6条)
i 配置(業務の配分及び権限の付与を含む)、昇進、降格及び教育訓練
ii 住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置
iii 職種及び雇用形態の変更
iv 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新- 詳細は厚生労働省のパンフレット「男女雇用機会均等法のあらまし」を参照下さい
- (上記2つの項目について)間接差別も禁止されています(7条)
- 間接差別とは、次のことをいいます
@性別以外の事由を要件とする措置であって
A他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるものを
B合理的な理由がないときに講ずること - 詳細は厚生労働省のパンフレット「男女雇用機会均等法のあらまし」を参照下さい
- 間接差別とは、次のことをいいます
- ポジティブアクション(職場に事実上生じている男女間の格差を是正して、男女の均等な機会・待遇を実質的に確保 するために、女性のみを対象とする又は女性を有利に取り扱う措置)は構いません
- 婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止 妊産婦に対してなされた解雇は無効です (ただし、解雇が婚姻、妊娠、出産等を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りではありません)
- 深夜業に従事させる場合には、通勤及び業務の遂行の際における女性社員の安全の確保に必要な次の措置を講ずるように努めなければなりません
- 通勤及び業務の遂行の際における安全の確保
・送迎バスの運行、公共交通機関の運行時間に配慮した勤務時間の設定、社員駐車場の防犯灯の整備、防犯ベルの貸与等を行う
・女性社員が一人で作業をすることを避ける - 子の養育又は家族の介護等の事情に関する配慮
・子の養育又は家族の介護を行う一定範囲の社員が請求した場合には、育児・介護法の定めるところにより、深夜業をさせない - 仮眠室、休養室等の整備
・夜間に社員に睡眠を与える必要のあるとき又は仮眠することのできる機会があるときは、労働安全衛生法の定めるところにより、男性用と女性用に区別して、適当な睡眠又は仮眠の場所を設ける
・男性用と女性用に区別して便所及び休養室等を設ける - 健康診断等
・労働安全衛生法の定めるところにより健康診断を行い、健康診断の結果、必要に応じて、社員の実情を考慮して、深夜以外の時間帯における就業への転換、作業の転換、労働時間の短縮等の措置を講ずる
- 通勤及び業務の遂行の際における安全の確保
妊産婦に対する法規制
妊産婦には、次のような保護規定があります。
- 妊婦
- 6週間(多胎妊娠では14週間)以内に出産予定で、妊婦が請求したときは、就業禁止です
- 産前・産後休業の賃金については、有給とするか無給とするかは会社の(就業規則等)取り決めによりますが、健康保険法による出産手当金の給付があります
- 産前休暇を取らないときは、法的には労基法19条の解雇制限期間とはなりませんが、この期間に解雇しないよう厚生労働省は指導しています
- 次の業務は全て禁止です(詳細は、「女性労働基準規則」参照)
- 坑内業務
- 危険有害業務(添付ファイルの通りです) ⇒ (PDFファイル 138KB)
- 請求があったとき、軽易な業務に転換させなければなりません
- 軽易な業務を新たに作ってまで転換させる必要はありません
- 労働時間帯の変更も含まれます
- 請求があったとき、フレックスタイム制以外の変形労働時間制において、法定労働時間を超えて労働させてはなりません
- 管理監督者等(労基法41条該当者)には適用されません
- 請求があったとき、災害時、公務及び36協定により、時間外労働や休日労働をさせてはなりません
- 管理監督者等(労基法41条該当者)には適用されません
- 請求があったとき、深夜業をさせてはなりません
- 母子保健法による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保しなければなりません
- 保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければなりません
- 出産
- 妊娠4ヶ月(85日)以上の分娩をいい、流産、早産、死産、中絶を問いません
- 出産当日は、産前に含まれます
- 産婦(産後1年)
- 産後8週間は就業禁止です(但し、産後6週間以降、本人が請求し、医師が認めた業務は就業可能)
- 産前・産後休業の賃金については、有給とするか無給とするかは会社の(就業規則等)取り決めによりますが、健康保険法による出産手当金の給付があります
- この期間の産後休業中、及び休業終了後30日間は労基法19条の解雇制限期間です
- 次の業務は全て禁止です(詳細は、「女性労働基準規則」参照)
- 坑内業務(但し、産婦が申出たときのみ)
- 危険有害業務(添付ファイルの通りです) ⇒ (PDFファイル 138KB)
- 請求があったとき、フレックスタイム制以外の変形労働時間制において、法定労働時間を超えて労働させてはなりません
- 管理監督者等(労基法41条該当者)には適用されません
- 請求があったとき、災害時、公務及び36協定により、時間外労働や休日労働をさせてはなりません
- 管理監督者等(労基法41条該当者)には適用されません
- 請求があったとき、深夜業をさせてはなりません
- 母子保健法による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保しなければなりません
- 保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければなりません
- 産前産後休業期間には、社会保険料の免除制度が有ります
- 事業主負担分も免除されます
育児をする者に対する法規制(特記ないものは男女共通に適用されます)
- 1歳(1歳2ヶ月、1歳6ヶ月、2年未満の子の育児休業)
- 休憩時間の他、1日2回各30分以上の育児時間を請求できます(女性のみ)
- 労働時間が4時間以内なら1回です
- 育児・介護休業法に基づき育児休業した場合、雇用保険から育児休業給付が支給されます(休業開始時賃金月額の50%)
- 労使協定で除外された者を除き、育児休業できます
- 育児休業の詳細は、育児・介護休業法を参照下さい
- 下記の「3歳未満の子の育児」や「小学校就学前の子の育児」の規定も適用されます
- 3歳未満の子の育児
- 労使協定で除外された者を除き、請求があったときは、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させてはなりません
- 管理監督者等(労基法41条該当者)には適用されません
- 変形労働時間制、事業場外労働のみなし労働時間制や裁量労働制においても適用されます
- 労使協定で除外された者を除き、申出により、育児休業をしていないものに、所定労働時間の短縮措置を講じなければなりません
- 短縮措置の内容は、1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含むものとしなければなりません
- 管理監督者等(労基法41条該当者)には適用されません
- 変形労働時間制、事業場外労働のみなし労働時間制や裁量労働制においても適用されます
- 所定労働時間の短縮措置の対象とならない労働者への代替措置(育児休業に関する制度に準ずる措置、フレックスタイム制、始業・終業時刻の繰り上げ下げ、保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与のいずれか)を講じなければなりません
- 育児休業期間には、社会保険料の免除制度が有ります(育児休業を開始した月から育児休業が終了する日の翌日の前月まで)
- 事業主負担分も免除されます
- 育児休業又は育児休業制度に準ずる措置による休業を終了した場合、育児休業等終了月(終了した日が月末である場合は、その翌月)以後3ヶ月間に、報酬の支払基礎日数が17日以上ある月の報酬の平均月額により、標準報酬額を改定し、次の定時決定までの標準報酬月額とします(報酬額が下がれば保険料も下がります)
- 3歳未満の子を養育する厚生年金の被保険者が、養育する前と比べて、勤務時間の短縮等で標準報酬月額が下がった場合、申出により、将来の年金額については、従前の高い標準報酬により計算するいう養育期間の標準報酬月額の特例が適用されます(産前・産後休業期間は含まれません)
- 下記の「小学校就学前の子の育児」の規定も適用されます
- 小学校就学前の子の育児
- 労使協定で除外された者を除き、1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日の看護休暇が取得できます
- 付与日数は、休暇申出時点における子の人数によります(年の途中で数が減っても既に取得した休暇は有効です)
- 年の途中に入社した者や労働契約期間が1年に満たない者にも同じ日数となります
- 有給休暇とするか、無給休暇とするかは就業規則等で定めます
- 請求があったときは、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、制限時間(24時間/月、150時間/年)を超えて時間外労働をさせてはなりません
- 時間外労働の制限期間と36協定の一定期間の開始日にずれがあり得るので注意が必要です(詳細略)
- 次の社員には適用されません
・雇用期間が1年未満
・1週間の所定労働日数が2日以下 - 管理監督者等(労基法41条該当者)には適用されません
- 請求があったときは、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、深夜業をさせてはなりません
- 次の社員には適用されません
・雇用期間が1年未満
・深夜においてその子を常態として保育できる同居の家族がいる場合
・1週間の所定労働日数が2日以下
・所定労働時間の全部が深夜(一部でも深夜時間帯以外であれば適用対象となります)
- 次の社員には適用されません
- 育児休業に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、所定労働時間の短縮措置又はフレックスタイム制等の措置に準じて、必要な措置を講ずる努力義務があります