平均賃金に関する法規制
労働基準法では、次のケースにおいて平均賃金が用いられます。
- 解雇予告手当
- 休業手当
- 災害補償
- 減給の制裁の制限額
- 年次有給休暇の賃金
平均賃金の算出方法は法で定められており、ここでは、それら平均賃金に関する法規制について説明します。
平均賃金の算出においては、3ヵ月に満たない場合の計算や産前産後の休業期間等算定の日数や賃金額を除外して計算すべきものなど、例外事例が多々ありますので、紛らわしいときは、茨城労働局又は最寄りの労働基準監督署で確認された方が良いと思います。
平均賃金額の計算
平均賃金は、原則として次式により算出します。
平均賃金=(計算すべき事由の発生した日以前3ヶ月間に支払った賃金総額)/(同3ヶ月間の総日数)
- 賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算します
- 一賃金締切期間に満たない期間に対し、月によって定められた賃金が減額されることなく支払われたときは、この期間の日数を30日として計算します
- 賃金総額について
- 臨時の賃金、3ヶ月を超える期間毎の賃金(賞与)は賃金総額に含めません
(結婚手当、私傷病手当、等は臨時の賃金です)
(一括支給の寒冷地手当は含めず、冬営手当は含める、等あいまいなケースが有ります) - 通勤定期券が支給される場合は、各月分を含めます
- 年棒制で、賞与月にその一部を支払うものは各月分を平均賃金に含めます
- 年次有給休暇の日数と賃金は計算に含めます
- 例えば、8月に賃金増額が決定し、4月から遡って支給することが協約で定められたとき、平均賃金は新賃金に基づき計算します
但し、災害補償においては、事由発生時に確定した賃金に基づき計算します(この場合ベースアップ分は含めません)
- 臨時の賃金、3ヶ月を超える期間毎の賃金(賞与)は賃金総額に含めません
- 次の日数及びその期間中の賃金は、上式の期間及び賃金の総額から控除します。尚、算定事由の発生した日は、総日数に含まれません。
- 業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間
- 産前産後の女性が法65条の規定によって休業した期間
- 使用者の責めに帰すべき事由によって休業した期間(一部休業日や所定休日も使用者側理由で休業したものとして扱います)
- 育児休業、介護休業をした期間
- 試みの使用期間(但し、試用期間中に算定理由が発生したときは算入します)
- 労働争議による正当な罷業、怠業等
- その他、(行政当局によると)組合専従期間も除外されます
- 賃金が、日給、時給、出来高払い制、請負制の場合は、最低保障額があります
(残業代もここに含まれます)
(時給・日給・出来高払等請負給の過去3ヶ月の総額)/(同3ヶ月間の実労働日数) x 60/100 - 賃金が、週、月等の一定期間の固定給と、日給、時給、出来高払い制、請負制の併用の場合は、原則の式と上式で得られた賃金の和となります
(月給制でも残業がある場合、或いは、基本給は時給制だが、毎月固定の手当(通勤手当等)が支給されている場合等が該当します) - 私傷病欠勤により賃金を減額される場合等
例えば、月給20万円で、7月は私傷病欠勤(無給)、8月、9月は通常通り出勤したとき- 原則通りの計算
(20万円+20万円)÷(30日+31日+31日)=4,347.83円 - 最低保障額
(20万円+20万円)÷(23日+20日)×60%=5,581.40円 - 上記を比較し、高い最低保証額が平均賃金となります
- 原則通りの計算
算定事由発生日
各算定対象の算定事由発生日は次の通りです。
- 解雇予告手当: 解雇の通告をした日
- 休業手当: その休業日(2日以上に亘るときは、その初日
- 災害補償: 事故発生の日、又は疾病の発生が確定し日(打切り補償の場合も同じ)
- 減給の制裁の制限額: 制裁の意思表示が相手方に届いた日
- 年次有給休暇の賃金: 年次有給休暇を与えた日(2日以上に亘るときは、その初日)
平均賃金に関する特例等
平均賃金の算定においては、次のような特例や、原則の算定式が適用できない、或いは適用し難いケースがあります。算定方法に迷ったときは、上述の通り、茨城労働局又は最寄りの労働基準監督署で確認された方が良いと思います。
- 所定労働時間が2暦日にわたる勤務の場合
- 始業時刻の属する日の労働とします
- 一昼夜交替勤務の場合は、2日の労働とします
- 雇入後3ヶ月に満たない者については、雇入後の期間とします
- この場合でも、賃金締切日があるときは、直前の締切日から起算します(但し、1賃金算定期間未満のときは、算定理由発生日から計算します)
- 定年退職後、引き続き再雇用されたような場合は、雇用が継続しているものとして平均賃金を算出します
- 算定事由発生日前3ヶ月以上、業務上災害による休業、産前産後休業、育児・介護休業、使用者側理由による休業をしているときは、都道府県労働局長が平均賃金を定めます
- 算定事由発生日前3ヶ月以上、使用者側理由によらない休業をしているときにおいても、都道府県労働局長が平均賃金を定めます
- 試用期間中の者については、試用期間中の賃金と期間を含めます
- この場合でも、賃金締切日があるときは、直前の締切日から起算します(但し、1賃金算定期間未満のときは、算定理由発生日から計算します)
- 新規学卒者の自宅待機期間中の平均賃金
- 予め賃金額が定められている者はその賃金額とします
- 自宅待機が一部の採用内定者に対して実施されたときは、自宅待機とならなかった者の賃金額を用います
- 全員が自宅待機の場合は、労働契約締結時に参考として示された賃金額等から推算します
- じん肺にかかった労働者の平均賃金は、診断によりじん肺発生が確定した日を基準とした平均賃金とじん肺に罹ったために作業の転換をした日を基準とした平均賃金の高い方とします
- 日々雇い入れられる者の平均賃金は、別に定めがあります(ここでは省略します)