OHSAS18001規格の要求事項
OHSAS18001規格の要求事項は、以下の通りです。
正確を期すには、規格の原文を読んで頂くようお願いします。原文は英文ですが、日本規格協会より和訳版が発行されています。
OHSAS18001規格の要求事項と解説
4.1 一般要求事項
- 以下の4.2〜4.6までに示す規格の要求事項を満たすように、労働安全衛生マネジメントシステム(以下、マネジメントシステムという)を確立し、文書化し、実施し、維持し、継続的に改善する
- マネジメントシステムの適用範囲を定め、文書化する・・・(会社全体/工場/○○事業部、等で、通常組織図で示し、適用除外の部分が有るときは明確にする)
4.2 労働安全衛生方針
- トップマネジメントが、労働安全衛生方針(以下、方針という)を定める(若しくは、承認する)
- 方針の内容は次の通りとし、文書化する
- 組織の労働安全衛生リスクの性質、規模に合ったものとする
- ケガや病気を予防すること、及び安全衛生管理と安全衛生パフォーマンスを継続的に改善することを約束(コミット)する
- 危険源(ハザード)に関係する法的要求事項や業界・社内基準等(自主管理基準等)を順守することを約束する
- 安全衛生目標を設定するときやレビューするときの方向性を示す(即ち、方針に沿って目標を定め、レビューする)
- 方針は、次のように取り扱う
- 組織の管理下で働く全ての人(社員、協力業者、請負業者)に、各々の労働安全衛生義務を自覚させるよう、周知する・・・(協力業者、請負業者については何処までの範囲とするか決める)
- 利害関係者が入手可能である
- 常に適切なものとするために、定期的に見直す
4.3 計画
4.3.1 危険源の特定、リスクアセスメント及び管理策の決定
- 継続して、危険源を特定し、そのリスクアセスメント及び必要な管理策の決めるための手順を確立し、実施し、維持する
- 危険源の特定及びリスクアセスメントの手順においては、次のことを考慮する
- 定常活動及び非定常活動
- 職場に出入りするすべての人の活動(請負業者や来訪者を含む)
- 人の行動、能力及びその他の人的要因
- 社員、協力業者、請負業者の健康と安全に悪影響を与えうる職場外における危険源
- 組織の業務によって、職場近辺に生じる危険源
- 組織が提供する、又は他者から提供される、インフラストラクチャー、設備や原材料
- 組織、その活動又は原材料の変更又は変更の提案
- (一時的な変更を含め)マネジメントシステムの修正、及びその修正の運用、プロセス、及び活動への影響
- リスクアセスメント及び管理策に関連する法的義務
- 人の能力への適応を含め、作業領域、プロセス、施設、機械設備/機器、操作手順、及び勤務・作業体制の設計
- 危険源の特定とリスクアセスメントの方法は、次のようにする
- 事後的ではなく予防的にするように、その適用範囲、性質、タイミングについて定める
- 適宜、リスクの特定、優先度及び文書化、管理策の適用を含める
- 変更を管理するために、変更する前に、組織、マネジメントシステム又はその活動において変更に関連する危険源及びリスクを特定する
- 管理策を決定する際に、これらのアセスメントの結果を確実に考慮する
- 管理策を決定する際、又は現在の管理策の変更を検討する際には、次の優先順位に従ってリスクを低減するように考慮する
- 除去
- 代替(置き換え)
- 工学的な管理策
- 標識/警告及び/又は管理的な対策
- 個人用保護具
- 危険源、リスクアセスメント、管理策について結果を文書化し、常に最新のものとする
- マネジメントシステムを確立し、実施し、維持するに当たっては、リスクとその管理策を確実に考慮する
4.3.2 法令及びその他の要求事項
- 適用される法的要求事項及び自主管理基準等を特定し、参照できるようにするための手順を確立し、実施し、維持する
- マネジメントシステムを確立し、実施し、維持する上で、これらの適用される法的要求事項及び自主管理基準等を確実に考慮に入れる
- 法的要求事項及び自主管理基準等を常に最新のものとする
- 法的要求事項及び自主管理基準等を、社員、協力業者、請負業者及び利害関係者に周知する
4.3.3 目標及び実施計画
- 安全衛生目標を設定し、文書化し、実施し、維持する
- 目標の設定とレビューにおいては、次のことを考慮する
- 目標は、できるだけ達成したかどうかわかるようなものとする(できれば数値化する)
- 目標は、ケガや病気の予防及び適用される法的要求事項及び自主管理基準等の順守、並びに継続的改善に関するコミットメントを含めて、方針に沿ったものとする
- 目標を設定しレビューするにあたっては、法的要求事項及び自主管理基準等、並びに安全衛生リスクを考慮に入れると共に、技術上の選択肢、財務上、運用上及び事業上の要求事項、並びに利害関係者の見解も考慮する
- 目標を達成するための実施計画を確立し、実施し、維持する
- 実施計画には、少なくても次の事項を含める
- 目標を達成するための責任者とその権限
- 目標達成のための手段とスケジュール
- 実施計画は、目標達成を確実にするために、定期的にレビューし、必要あれば調整する
4.4 実施及び運用
4.4.1 資源、役割、責任、説明責任及び権限
- トップマネジメントは、労働安全衛生及びそのマネジメントシステムの最終責任をもつ
- トップマネジメントは、以下のことによって自身のコミットメントを実証する
- マネジメントシステムを確立し、実施し、維持し、改善するのに不可欠な資源を準備する(資源には、人的資源、専門的な技能、組織のインフラストラクチャー、技術及び資金を含む)
- 組織内において、役割、責任、権限を定め、文書化し、そして周知する
- トップマネジメントの中から、労働安全衛生の管理責任者(複数も可)を任命し、関係者に周知し、その管理責任者に、次のことに関する役割及び権限を、他の責任に関わりなく与える・・・(労働安全衛生法の規定を考慮して決めるのが良い)
- 規格に従って、マネジメントシステムが確立され、実施され、かつ維持されることを確実にする
- マネジメントシステムにおけるパフォーマンスについて、トップマネジメントに報告し、それがシステムの改善のために用いられるようにする
- 経営管理責任を担う者は、パフォーマンスの継続的改善へのコミットメントを実証する(やるべきことを実行し、結果を示す)
- 社員及び関係者全員が、安全衛生の要求事項への順守を含めて、自らの役割について責任を持つ
4.4.2 力量、教育訓練及び自覚
- 安全衛生に影響を与える可能性のある作業を行う者が、適切な教育、訓練、又は経験に基づく力量をもつことを確実にし、その記録を保持する
- 安全衛生リスク及びマネジメントシステムに伴う教育訓練のニーズを明確にし、教育訓練を実施し(又はその他の処置をとり)、その有効性を評価し、記録を保持する
- 社員及び関係者に、次のことを自覚させるための手順を確立し、実施し、維持する
- 作業活動により、どういった安全衛生における結果が生じるのか、及び各人のパフォーマンスが改善された場合に、どういった安全衛生上のメリットが得られるのか
- 方針及び手順、並びに緊急事態への準備及び対応で定められたことを含め、マネジメントシステムの要求事項に適合するための役割、責任及びその重要性
- 手順を守らなかったときに予想される結果
- 教育訓練においては、次のようなレベルの違いを考慮する
- 責任、能力、言語能力及び識字力
- リスク
4.4.3 コミュニケーション、参加及び協議
4.4.3.1 コミュニケーション
- 安全衛生の危険源及びマネジメントシステムに関して、次のコミュニケーション手順を確立し、実施し、維持する
- 社内コミュニケーション
- 請負者及び来訪者とのコミュニケーション
- 外部の利害関係者からのコミュニケーションについて受付け、文書化し、対応する
4.4.3.2 参加及び協議
- 社員の参加や請負者との協議に関わる手順を確立し、実施し、維持する
- 次のことに対する社員の参加
・危険源の特定、リスクアセスメント及びリスク管理策の決定
・発生事象の調査
・方針や目標の設定及びレビュー
・安全衛生に影響する何らかの変化が生じた場合の協議
・安全衛生問題に関する代表者の選出 - 労働安全衛生に影響する何らかの変化が生じた場合の請負者との協議
- 次のことに対する社員の参加
4.4.4 文書化
- マネジメントシステムの文書には、次の事項を含める
- 方針及び目標
- マネジメントシステムの適用範囲
- マネジメントシステムの主要な要素、それらの相互作用の記述(安全衛生マニュアルのこと)、並びに関係する下位文書やその他参照文書
- 規格が要求する文書(記録を含む)・・・(本文において、「文書化」と、要求されているもの)
- 安全衛生リスクの運営管理に関係するプロセスの効果的な計画、運用及び管理を確実にするために必要な記録を含む文書
4.4.5 文書管理
- マネジメントシステム及びこの規格で必要とされる文書は管理する(記録について4.5.4参照)
- 次の事項に関わる手順を確立し、実施し、維持する
- 発行前に、適切かどうかの観点から文書を承認する
- 文書はレビューし、必要に応じて更新し、再承認する
- 文書の変更の識別及び現在の改訂版の識別を確実にする
- 適切な版の文書が、必要なときに、必要なところで使用可能な状態にする
- 文書は読み易く、容易に識別可能な状態にする
- マネジメントシステムの計画及び運用のために必要な外部文書を明確にし、その配付を管理する
- 廃止文書が誤って使用されないようにし、何らかの目的で廃止文書を保持する場合には、適切な識別をする
4.4.6 運用管理
- 安全衛生リスクに対し管理策の実施が必要な場合、特定された危険源に関して運用及び活動を決定する(このとき、何らかの変更が有る場合は、4.3.1の変更管理を適用する)
- それらの運用及び活動のために、次のことを実施し、維持する
- 組織及び活動に適用可能な運用管理策(運用管理策をマネジメントシステム統合させる)
- 購買品、機器及びサービスに関連する管理策
- 請負者及び来訪者に関連する管理策
- 方針及び目標から逸脱しないための手順書(文書化が必要)
- 方針及び目標から逸脱しないための運用基準書(文書化が必要)
4.4.7 緊急事態への準備及び対応
- 潜在する緊急事態を特定し、対応するための手順を確立し、実施し、維持する
- 発生した緊急事態が発生したときは、安全衛生への悪影響を予防又は緩和する
- 緊急事態への対応を計画する際には、消防署、病院や近隣など関連する利害関係者のニーズを考慮する
- 可能であれば、関連する利害関係者を含めて、緊急事態への対応手順を定期的にテストする
- 定期的に、特に上記テスト後に、及び緊急事態の発生後には、緊急事態への準備及び対応手順をレビューし、必要に応じて、改訂する・・・(例えば、指揮命令系統、責任・権限、避難方法、等々)
4.5 点検
4.5.1 パフォーマンスの測定及び監視
- 安全衛生パフォーマンスを定常的に監視及び測定するための手順を確立し、実施し、維持する
- この手順には、次の事項を含める
- 定性的指標及び定量的指標
- 安全衛生目標の達成度合いの監視
- (安全及び衛生に関して)管理策の有効性の監視
- 安全衛生の実施計画、管理策及び運用基準の適合を監視する予防的実績指標・・・(教育訓練回数や時間、リスクアセスメントの進捗度、改善提案件数、等々)
- 病気、発生事象(事故、ニアミスを含む)及びその他の安全衛生パフォーマンスの経時的証拠までを監視する事後的実績指標・・・(事故件数、度数率、苦情件数、監査の指摘件数、等々)
- 是正処置及び予防処置分析を容易にするのに十分な監視と測定のデータ及び結果の記録
- 監視と測定に機器を使用する場合には、機器の校正及び保守の手順を確立し、実施し、維持すると共に、校正や保守の実施結果の記録を保持する
4.5.2 順守評価
- 適用すべき法的要求事項の順守を定期的に評価する手順を確立し、実施し、維持する
- 自主管理基準等の順守を評価する(法的要求事項の評価に組み込んでもよいし、別の手順を確立してもよい)
- 定期的な評価の結果の記録を残す
4.5.3 発生事象の調査、不適合、是正処置及び予防処置
4.5.3.1 発生事象の調査
- 次の事項のために発生事象を記録し、調査し、分析するための手順を確立し、実施し、維持する
- 発生事象の原因又はそれに係っていると思われる労働安全衛生の欠陥及びその他の要因を決定する
- 是正処置の必要性を明確にする
- 予防処置の機会を明確にする
- 継続的改善の機会を明確にする
- それらの調査結果を周知する
- 調査はタイムリーに実施し、是正処置又は予防処置は、次節(4.5.3.2)に従って処理する
- 発生事象の調査結果は、文書化し、維持する
4.5.3.2 不適合並びに是正処置及び予防処置
- 顕在及び潜在の不適合に対応するための手順、並びに是正処置及び予防処置をとるための手順を確立し、実施し、維持する
- 手順には、次のことについて必要な事項を定める
- 不適合を特定し、修正し、それらの安全衛生への影響を緩和するための処置をとる
- 不適合を調査し、原因を確定し、再発を防ぐための処置をとる
- 不適合を防止するための処置が必要かどうか評価し、必要なら処置を実施する
- とられた是正処置及び予防処置の結果を記録し、周知する
- とられた是正処置及び予防処置の有効性をレビューする
- 新たな危険源又は危険源の変更、又は新たな管理策又は管理策の変更の必要性を特定した場合は、提案された是正・予防処置を実施する前にリスクアセスメントを行う
- 顕在及び潜在する不適合の原因を除去するためにとられる是正処置又は予防処置は、問題の大きさ、及び生じた安全衛生リスクに見合ったものとする
- 是正処置及び予防処置から生じる必要な変更は、全てマネジメントシステム文書に確実に反映する
4.5.4 記録の管理
- マネジメントシステム及びこの規格の要求事項への適合、並びに達成した結果を実証するのに必要な記録を作成し、維持する
- 記録の識別、保管、保護、検索、保管期間及び廃棄についての手順を確立し、実施し、維持する
- 記録は、読みやすく、識別可能で、追跡可能であること
4.5.5 内部監査
- 次の目的のために、あらかじめ定められた間隔でマネジメントシステムの内部監査を確実に実施する
- マネジメントシステムについて、次のことを判断・評価する
・規格の要求事項を含めて、安全衛生管理の取決め事項に適合しているかどうか
・適切に実施され、維持されているかどうか
・方針及び目標に対し有効かどうか - 監査の結果をトップマネジメントに提供する。
- マネジメントシステムについて、次のことを判断・評価する
- 監査プログラムは、組織活動のリスクアセスメントの結果、及び前回までの監査結果に基づき、自らが計画し、策定し、実施し、維持する
- 次の事項に対処する監査手順を確立し、実施し、維持する
- 監査の計画及び実施、結果の報告、並びにこれに伴う記録の保持に関する責任、力量及び要求事項
- 監査基準、適用範囲、頻度及び方法の決定
- 監査員の選定及び監査の実施においては、監査プロセスの客観性及び公平性を確保する
4.6 マネジメントレビュー
- トップマネジメントは、マネジメントシステムが、引き続き適切で、妥当で、かつ、有効であることを確実にするために、あらかじめ定められた間隔でマネジメントシステムをレビューする
- レビューでは、方針及び目標を含む、マネジメントシステムの改善の機会及び変更の必要性の評価を含める
- マネジメントレビューの記録は、保持する
- マネジメントレビューへのインプットは、次の事項を含める
- 内部監査の結果、法的要求事項及び自主管理基準等の順守評価の結果
- 参加及び協議の結果
- 苦情を含む、外部の利害関係者からの関連するコミュニケーション
- 安全衛生パフォーマンス
- 目標の達成度
- 発生事象の調査、是正及び予防処置の状況
- 前回までのマネジメントレビューの結果に対するフォローアップ
- 安全衛生に関する法的要求事項及び自主管理基準等の進展を含む、変化している周囲の状況
- 改善のための提案
- マネジメントレビューからのアウトプットは、継続的改善へのコミットメントに整合させ、又、次の事項に関係する、あらゆる可能な変更についての決定及び処置を含める
- 安全衛生パフォーマンス
- 方針及び目標
- 資源
- その他のマネジメントシステムの要素
- マネジメントレビューからの関連するアウトプットは、コミュニケーション及び協議に使用できるようにしておく